第78回九州・沖縄生殖医学会の開催にあたって
九州・沖縄生殖医学会会員の皆様には、ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
この度、伝統ある第78回九州・沖縄生殖医学会を琉球大学産婦人科が担当させていただきますこと、大変光栄に存じますとともに、心より感謝申し上げます。
2019年12月に確認された新型コロナ感染症は世界を席巻し、生殖医療の現場にも多大な影響を与えました。新型コロナ感染症が何者かがわからなかった当初、不妊治療は不要不急として控えられた時期もありました。また、2020年5~7月の出生届は前年の11%減、2021年の出生数は80万を切る可能性も指摘されています。そんな中現場では、不妊治療と院内感染対策を両立させるための様々な対策をとりながら、患者さんの「子どもを持ちたい」という切実な思いに応えられてきたことと思います。
2020年12月には生殖補助医療法が成立し、第三者からの提供卵子や精子をもちいて産まれる子の親子関係が定義されました。しかしながら出自を知る権利や代理懐胎を巡る問題等が残されています。また、日本産科婦人科学会において、PGT-A/SR臨床研究の中間報告と公開シンポジウムが開催され、様々な立場の人から多くの意見が寄せられ、関心の高さが伺えました。そしてついに、2022年4月からは不妊治療が保険適応されることになります。短期間におけるこれらの変動は、生殖補助医療がこの国の少子化対策を食い止めるために大きく期待されていることを表していると思います。同時に我々生殖医療を担うものには、知識と技術の追求のみならず、高い倫理観が強く要請されていると思います。
2022年1月から新型コロナ感染症の第6波が到来し、本学術集会も急遽ハイブリッド開催とさせていただくことになりました。モーニングセミナーは、「保険診療化の観点からARTの卵巣刺激について考える」と題して、空の森KYUSHUの中島 章先生にご講演いただきます。さらに、教育講演では、東京大学産婦人科の甲賀かをり先生をお迎えし、「子宮内膜症合併不妊の取り扱いを考える」と題してご講演いただく予定としております。
会の開催にあたりましては、日本生殖医学会九州ブロック会長の楢原久司名誉教授、大分大学医学部産婦人科の河野康志先生、並びに富士製薬工業(株)、フェリング・ファーマ株式会社様のご助力に心より感謝申し上げます。
九州・生殖医学会としては初めてのハイブリッド開催でありますが、久しぶりの対面による交流ができることを、そしてオンライン上で安心・安全なディスカッションができることを心より楽しみにしております。感染対策を万全とし、多数の皆様のご参加をお待ちしております。